<Interview>


舟木病院医院長 妹尾雅明先生に聞く

ーいやしと今後の舟木病院についてー

= 人としての温かさ =

ー舟木病院は来年ホスピス病床ができるそうですね。どんなホスピスができるんでしょうか?

 ホスピスというともうよくならない人が行くところというイメージがあるけど、語源はラテン語のホスピティエムで、人をもてなすところという意味なのね。度に疲れて休むところがホテルだし、病気になっていやすところがホスピタルですよ。
 僕の思うホスピスは、その人らしく最期まで生き抜くための、前向きな生き方なんです。治るのが難しいといわれていた人でも、その中でもっと自分の人生を自分のものとして前向きに考えることができる・・・そういう形で応援できる病院になったらいいと思うんですよ。
 そのためには環境の整備も大事なんでしょうが、本当のいやしって患者さん自身が自分の本音に向かって打ち込んでいるのがいやしになるんじゃないかと思うんです。
 一生懸命自分のやりたいことに熱中していたときに、いやされていると思うでしょ?つらいこともつらく感じないし・・・ね。そうなるために痛みをとったり、いろんな応援を周りからしていくわけです。


ー 病気という現実があっても、今の状況が幸せだと思えるかどうかですね。そういう環境をサポートしていくということですか。

 そうそう。
 患者さん一人一人みんあ違うから、スタッフの側にそれにうまく対応できる能力、心の柔軟性がなかったら、いろんなことを受け入れられないと思うし・・・。
 もうひとつは人間の中に大事なものがあって、その大事なものを大事にしようと思うからいろんな人を受け入れることができるんじゃないかと思うんですよ。
 患者さんを大事に思う気持ちの中に、対面している患者さんのもっと向こうに本当のその人らしいものがあるんじゃないかと・・・、それを感じようとして接すれば、きっとうまく接することができるんじゃないかと思うんですよ。表面だけに動かされると、心がざわざわするからね。

ーそれは妹尾先生がスタッフの人たちに常々言っていることなんですか?

 マニュアル的ではなくて、向こうにあるものをつかむことができるような感性が開かれていかなければ難しいね。僕が看護師さんに、こうしなさい、ああしなさいというようなものではなくて、その人の感じるものが大事なんじゃないですか。
 人をいやすというのも熱意というか、人間として温かいものがあって何か伝わるからいやされるんだろうと思うんです。
 その人がもっている本当のものと、我々がサポートするものとが一致したとき、いやされるとか、幸せだなと感じるものだと思うんですよ。
 スタッフ側の満足度ではないんだよね。だから変な先入観を持って接しない方がいいよね。

−舟木病院では花が絶えないと聞きましたが。

 いろいろ持ってきてくれる人がいるんですが、亡くなったときは必ずお花を添えるようにしています。
 私はお別れするときに、「長い人生、よく生きてこられましたね、本当にご苦労様でした」と心の中で言うんです。そしてどんなに外来の患者さんがたくさんいても、その人に敬意を表するという気持ちで、そのお花と一緒に正面玄関からお見送りします。

= 舟木病院の3つの基本理念 =

ー舟木病院は3つの基本理念を掲げていますね。そのひとつに「個人個人が尊重され、医療によりその人らしさが実現できるように、その使命に情熱を燃やすボランティア集団であること」というのがありますが、情熱を燃やすボランティア集団というのはどういう意味ですか?

 その人その人の自主性を大事にして、自分がどうなのかということを一生懸命考え、自分の思っていることができているのかどうかというようなことを考えている人たちの集団であってほしいですね。自分がそこに主人公としてかかわっているという感じかな・・・。一人一人の目標が高ければ高いほど、病院というのはよくなるよね。
 もうひとつの基本理念に、「広く地域に向かって、公益性を有する病院として存在すること」というのがあるんだけど、ここは救急病院ではないですが、僕は夜中に救急があったら絶対断らないというのをモットーにしているんですよ。自分の見れる範囲でできることはしますし、自分でできないと思えばよそに紹介すればいいし・・・。
 以前いた病院では心臓血管外科が専門でしたが救急もやっていましたので、4年前にこの病院に来たとき、なんとか今まで自分がやってきたことが生かされるようにしてほしいなと想ったんです。
 それからもうひとつ「広く世界に貢献する病院」というのがあって、アメリカにあるメイヨークリニックのように、医療レベルがものすごく高い病院にしたいと想っているんです。舟木病院じゃないとできないことというのが必ずあるから、この地域に限らず日本全国、 世界から集まるような病院になってほしいな。
 だから舟木病院にとってホスピスというのは、いろんななかのひとつの選択肢でしかないんですよ。ホスピスがザッツオールではないんです。患者さんの中にいろんな選択肢があって、その一部という考え方でやっていきたいんです。

ー ということは、これから妹尾先生のご専門の循環器系を充実していかれるんですか?

 そうです。これからの若い看護師さんたちがどんどん研修に行ったり、海外へ勉強に行ってもらってね・・・。そういう人の集まりになれば舟木病院はますます発展していくんじゃないかなと思います。
 温かい人間性をベースに、さらに学問的にレベルが高い病院にしたいと想っています。30年、50年かかるかわからないけれどね。
 勉強というのは自分を高めるためにやるんです。結果的には患者さんに反映されるんですけど・・・。
 あせらず10年単位くらいで物事を考えていきたいですね。

ーがんばってください。

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